昨今、以前にも増してフラフ燃料という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないでしょうか?フラフ燃料は廃プラスチックを主とするエネルギー資源であり、セメント会社、製紙会社、製鉄会社を中心にCO2排出を削減するための手段として、積極的な利用が進められています。なぜフラフ燃料が注目されているのかをわかりやすくご説明いたします。
【目次】
1.「フラフ燃料とは?」 |
2.「フラフ燃料の現状」 |
2-1.使用率(代替エネルギー率) |
2-2.高い代替エネルギー率を誇るヨーロッパの歴史的背景 |
2-3.フラフ燃料の使用率を上げていく上での課題 |
3.「フラフ燃料の使用方法」 |
4.「フラフ燃料の未来」 |
5.「リョーシンの思い」 |
1.「フラフ燃料とは?」
フラフ燃料とは、主に、廃プラスチックを中心とした、紙くず、繊維くず、木くず等を破砕、選別した燃料である。一般的にイメージしやすいものは、いわゆる可燃物です。海外では、「SRF(Solid Recovered Fuel)」、「RDF(Refuse-Derived Fuel)」とも言われており、廃棄物由来の燃料を指しています。石油や石炭などの化石燃料由来のエネルギーの代替として注目を集めているエネルギーであり、環境への負荷を低減しつつ、廃棄物を有効に再利用する手段として注目を浴びています。
←フラフ燃料
2.フラフ燃料の現状
2-1.使用率(代替エネルギー率)
現在、ヨーロッパのセメント会社ではエネルギー供給の平均約60-70%が代替燃料によって賄われていると言われています。
一方で、日本では代替燃料の利用割合は20%程度と言われています。日本で一番代替エネルギー率が高いセメント工場でも55%と言われていますので、日本で高水準といわれているセメント工場でも、エネルギー代替が進んでいる欧州の工場と比較すると、まだまだ代替率を上げられるというのが今の日本の現状です。ヨーロッパでは、国や地域を挙げて代替エネルギー率を高めていくという気運があります。
2-2.高い代替エネルギー率を誇るヨーロッパの歴史的背景
このフラフ燃料は、欧州では以前から積極的に使用されてきた歴史があります。
その背景には、大きく2つの要因があると言われています。
1つ目は、オーストリアといった欧州の内陸部に位置する国々は石炭を調達する際の輸送手段の困難性(海に面していないため、海上輸送できない)を理由に、代替燃料として、フラフ燃料といった地場で発生する廃棄物を資源として利用する活路を早くから見出していた。そのため、実際に、欧州の内陸部の国々は代替エネルギー率が高くなっている傾向があります。
2つ目は、「炭素税(カーボンプライシング)の導入」がフラフ燃料使用量の後押しとなったことです。石炭を使用すればするほど、炭素税を多く払う必要があるため、
自社設備に投資して、石炭(化石燃料由来の燃料)の使用量を抑える取り組みが活発になりました。実際に、微粉炭の吹き込みをフラフ燃料に代替できるようなロータリーキルンの改造が各国、各工場で進んでいる、さらには、サテライトバーナーを追加して、さらにフラフ燃料の使用を増やす改造を計画しているという話もよく聞きます。これは一概に炭素税に起因していると言えます。
現在の日本の代替エネルギー率の水準は、ヨーロッパの20~30年前の水準ということも耳にし、早くからフラフ燃料が使用されてきたことを窺い知ることができます。
2-3.フラフ燃料の使用率を上げていく上での課題
ヨーロッパと比較するとまだ代替エネルギー率の低い日本ですが、フラフ燃料の利用は着実に前進しています。各セメント会社も、化石燃料由来のエネルギーの代替として積極的にフラフ燃料の活用を進めており、そのための具体的な数値目標も掲げています。各社のニュースリリース等にそのような情報が記載されています。
フラフ燃料を一気に増やしたいところですが、課題もあります。一番大きな課題は、フラフ燃料に含有する「塩素濃度」です。高濃度の塩素が含まれるとセメント製造設備内部の腐食が進行するため、極力低い方が好ましいとされています。正式なボーダーラインは各社、各工場によって、異なっておりますが、目安は3,000〜5,000ppm(0.3〜0.5%)とされており、フラフ燃料の使用率を上げていく上で、課題となっています。
3.フラフ燃料の使用方法
製造されたフラフ燃料は、廃棄物処理業者から全国各地のセメント工場に輸送しやすくするために、1,100mm角のベール状態に梱包されます。
10トンのウイング車(※添付写真)であれば、最大24個積載することが可能です。このフラフ燃料は、セメント製造プロセスにおける、焼成という工程で使用されます。
輸送効率を上げるためにベール状にした荷姿を、破砕機、もしくは、解砕機で、破砕・解砕し、改めてバラバラの状態にする。このフラフ燃料を一旦サイロに貯蔵し、一定量ずつ切り出します。
焼成工程では、ロータリーキルンと呼ばれる高温に熱されている窯の中を、セメント原料が通過します。そのバーニングゾーンと呼ばれる部分では、約1,450度を維持する必要があり、メインバーナーの炎が上がる部分では、その温度は約2,200度にも達します。従来、この部分には、微粉炭(石炭を細かくしたもの)が使用されていました。
CO2排出量を減らすために、石炭からフラフ燃料に置き換えるということが、昨今、日本全国、そして、全世界を取り巻いている大きなムーブメントになっています。これは世界規模で2050年のカーボンニュートラルを実現しようとしている動きとみて取れます。
←1,100mm角のベールと10トンのウイング車
4.フラフ燃料の未来
現在、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、世界中で化石燃料由来の燃料の削減が進んでいます。廃棄物は、世の中の多くの人にとっては、不要なものとして扱われているかもしれませんが、間違いなく、立派な資源となっています。そして、その重要性は以前にも増してきています。
私たちの試算では、セメント業界だけの代替エネルギー(化石燃料由来ではないエネルギー)の需要が、年間160万トン程度必要とされていると考えています。
一方で、今後きれいな廃プラスチックは益々、「ケミカル・リサイクル」や「マテリアル・リサイクル」にもまわっていき、従来、フラフ燃料に使用されていたプラスチックもそちらにまわっていくことが想像できます。
そうなってくると、今までは、埋立や焼却にまわっていた廃プラスチックが上流のフラフ燃料にまわってくると考えています。日本国内では、未利用(単純焼却、埋立て)と呼ばれる廃プラスチックが、173万トン/年間あると言われています。
このようにして、これらの廃プラスチックは「エネルギー・リカバリー」に貢献していくということを私たちは考えています。セメント業界のみならず、製紙業界、製鉄業界からもフラフ燃料が注目を浴びており、まさに廃プラスチック争奪戦の様相があります。この傾向は、今後益々高まっていくというのが私たちの見立てです。
5.リョーシンの思い
リョーシンは、2001年に創業以来、「継続可能な高度循環型社会を創造する」という使命を掲げてきました。当時は、まだ循環型社会という言葉も、社会には馴染みがない言葉だったと思いますが、今は、「サステナブル・ソサイエティー」「サーキュラー・エコノミー」といった言葉が一般的になってきたことと共に、私たちのご提案を評価していただけるお客様の数も年々増えて、その数は、昨年、全国300社にも達しました。私たちの思いに共感いただき、一体となって、「継続可能な高度循環型社会を創造する」という目標をもっともっとスピードを上げて、大きな規模で実現していくことを今後も目指してまいります。「やる、以外にない。」