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2024.12.23

リチウムイオン電池とセンサー式消火設備

コラム

近年、リチウムイオン電池が原因とみられる火災は全国各地で後を絶たず、環境省によると、ごみ収集車やごみ処理施設の火災は2021年度1万1140件に上り、過去には工場が全焼するほどの火災も発生しています。
廃棄物処理工場においては、リチウムイオン電池をプラントに入れない事を前提として廃棄物を収集されていますが、完全に取り除くことは難しく、安全対策が求められることが多くなってきました。
今回はその安全対策の1つ〝センサー式消火設備〟についてわかりやすくご説明いたします。

※こちらの表は横にスライドします。

【目次】

1. センサー式消火器とは
1-1. リチウムイオン電池との関連
2. 求められる性能
2-1. 火種を見逃さない
2-2. 延焼しないシステム構築
2-3. 機器の保護
3. センサー式消火器をより詳しく知る方法
3-1. 株式会社リョーシンへ
3-2.YouTube
4.よくある質問
5.まとめ

 1. センサー式消火器とは

弊社のお客様の多くは、フラフ燃料やRPFの製造プラント、または建設系廃棄物(建廃)の破砕選別プラントを導入していただいています。
フラフ燃料プラントは、流している材料そのものが燃料となる廃プラ主体の原料ですので、一旦火が付くとすごい勢いで延焼してしまいます。
RPFプラントでは水没式を採用するなど、瞬間的に火が付く事は稀ですが、RPF保管ヤードで山になっているRPFを長期間そのままにすると、蓄熱により山の中心部から徐々に温度が上がり炭化し火が出ることがあります。
建廃の破砕選別プラントでは、火災の事例は多くありませんが粉塵が立ちやすい事から、プラント脇に積もった綿状の粉塵に火が付く可能性があります。
このように火災の原因は様々な要因があり、プラントに合わせ包括的に対策する必要があります。

その手段の一つとして多く採用されているのがNIR(近赤外線)センサーと温度センサーです。
現在では様々なセンサーがあり、検知の仕方も検知領域も違いますので一概には言えませんが、大体は『表面温度検知、内部温度検知、火花検知、煙検知、炎検知』の何れかの機能を有したセンサーを組み合わせて使用されています。
プラント上にセンサーを取り付け、火災の火種を発見した場合、自動的にプラントが停止し、火種を発見したあたりに水を噴霧するシステムが一般的です。

近年、リチウムイオン電池の形状破壊により二液が接触し、『火花と炎』が発生し火種の元となる火災原因が最も多く、またその件数も急激に増えてきました。
特に、フラフの製造プラントの様に流している材料が燃料利用用の材料である場合、火災リスクが大幅に上がりますので、破砕機の後のコンベヤなどに監視センサーを取り付けることが多くなってきました。
他には、RPF製造工場の様に保管ヤードで徐々に熱が高まる場合は、火種の発生まで時間差があり瞬間的に検知する必要はありません、センサーは検知範囲の広い空間温度検知センサーや煙感知センサーを採用し、常時監視するものが採用されます。
建廃系の破砕選別プラントのように粉塵が火種となるケースは、コンベヤ上の設置や検知範囲の広い空間温度検知センサーを組み合わせ設置することが多いです。



1-1. リチウムイオン電池との関連

プラント構築の際に重要なポイントは、何においても採算性の高いプラントに仕上げリスクマネジメントしておくことが基本ですが、これは別のコラムで紹介していますので割愛します。
フラフやRPF燃料の製造プラントを構築する際に特に気を付けるポイントは、製品の品質を守るという事です。
燃料製品では灰分の多さや塩素濃度などの品質を基準内に守る必要があります。投入する材料に抜くべき異物が何%混ざっているのかと、販売先の品質基準によって導入する機械も変動してきます。

近年では、光学式選別装置(ソーター)は欲しい処理量に合わせ、風力選別装置は選別物のサイズごとに、磁力選別装置はとにかく配置できそうな場所へ、各装置が複数台プラントに配置している現場が増えてきました。
目的は徹底した異物の除去と自動選別を狙ってのことで、必然プラントが大型化することが増えてきました。
また同時に、将来の材料の変動を見越して、より悪条件に対応できるように現段階ではオーバースペックとなっている投資も多く、また導入してないまでも将来設備を追加導入できるようにプラントの中にスペースを空けておくといった計画も増えています。
もう一つ、プラントが大型化する要因として、あえて処理能力を大きく取り、将来の増量に対応できるプラントが求められてます、現時点では処理能力が多すぎても時短で処理できてしまう為、メンテナンスに十分時間を掛けられ、他の仕事も同時に進められるという強みがあります。

大型のプラント設計で一番注意するべきポイントは、かさ比重です。
計画時は試算もしやすい為重量ベースで計画が進みますが、プラントの処理能力は体積で設計されます。
各装置はもちろんですがコンベヤ1本に至るまで全てが体積処理能力で設計されています。そこで重要になるのがかさ比重というわけです。
比重0.1と0.05の廃プラスチックがあったとします、見た目はさほど変わらないのですが同じ1tonを用意した際10㎥と20㎥の違いがあり、選定するコンベヤが全く違います。
プラント成功のカギは比重の見極めに掛かっていると言っても過言ではないくらい重要なポイントです、もし正確な測定が難しい場合や将来的に材料が変動する予測がある場合は比重を軽めに設定して計画を進めておくことをお勧めします。



2. 求められる性能

2-1. 火種を見逃さない

センサー式消火器に求められる性能として、まず、火種を見逃さないために高感度のセンサーが必要です。瞬間的に微細な火花や炎も確実に検知できるセンサーが最適です。
またコンベヤ上では、材料どうしが重なり合い層になっています、下に潜り込んだ火種はNIRセンサーなどの透過検知が出来るものが最適です。
ただし搬送量が多く層の厚みが200mmを超えてくる場合は、透過検知できるセンサーが少なくまた検知率が落ちる為、コンベヤなどの乗り継ぎ部で材料が落下する際に多方向からセンサー検知する方が検知率を高く維持できます。

また、広い空間の検知には火災の多様な兆候を捉えるために、取付位置に合わせて5から15m以上離れたところから煙や炎、温度を検知するセンサーが必要です。

2-2. 延焼しないシステム構築

消火と延焼防止では意味合いが違います、
消火は消防署が消火する場合に使用する様な多くの水量と高い水圧が必要となり、消火設備を用意するにはそれだけで水タンクやポンプなどの大型の設備投資が必要となり、あまり廃棄物処理の業界では採用されていません。
多くが延焼防止の対策を採用されています、このシステムは一旦火災が起きてしまうと力不足ですが、早い段階で火種を発見し、火種とその周辺に通常の水道圧で水をまき、延焼を防ぐことで、火災を事前に防ぐ防火対策です。
うまく適材適所に装置を配置できればボヤに至る前の段階で消火が可能となり、投資も抑えられますのでよく採用される手法です。
延焼防止効果をより効果的に実現する為のポイントとして、
 ・センサーの種類とセンサーの設置位置の検討
  (火種が発生しやすい場所や発生原因の検討)
 ・排水管の位置や太さ(水量)や噴霧範囲の検討
 ・火種を検知した際の挙動の確認
  プラントの自動停止や復旧までの確認フローの検討
以上を検討すればそのプラントに合った延焼防止システムを構築できます。

2-2. 機器の保護

火災対策を構築する際、当然火事が起きないように計画を練るのですが、火事を起こさせない事に注視し過ぎて、プラント機器の保護を見落として検討されているケースがあります。
多い事例として、破砕後のコンベヤで火花を検知したらプラントが全停止、火花を発見した周辺と破砕室内に散水をするものがあります。
一見良い対策に見えますが、破砕室内には多くの材料が残っています。上から水は掛けているので延焼はしませんでしたが、破砕室内の材料の下側でボヤとなり、熱によって破砕機のフレームが歪みベアリングがダメになり、コンベヤはゴムベルトの一部が炭化しました。
延焼防止が成功し火事にはなりませんでしたが、プラント自体は数カ月停止状態でした。

この場合、火種が見つかった時の挙動を工夫しておくことで機器の故障を防ぐことが出来ます。
火種を検知しても、破砕機は動かしたまま中の材料を出し切らせることがポイントです。
破砕機下のコンベヤが停止していると破砕機下に火種を含む材料が溜まってしまいますので、低速でコンベヤを動かし水を噴霧してタイマーで止めるか、火種を検知した範囲をプラントの搬送ワークを切り替えて隔離ヤードに入れるなどの対策で装置が故障するリスクを避けられます。
機器自体がボヤなどの熱や火による影響を受けないように設計しておくことで、火災と工場停止を避けるリスクマネジメントとなります。



3.センサー式消火器をより詳しく知る方法

3-1.株式会社リョーシンへ

お客様のプラントにマッチした消火システムの構築をご提案します。気になる点やご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

3-2. YouTube

こちらは、リチウムイオン電池が原因となった火災事故のニュース映像です。火災リスクについて再認識するためにぜひ、ご覧いただければと思います。

→リチウムイオン電池で大炎上 捨て方誤り18億円の復旧費も 愛知や三重の処理施設

→ごみ収集車・処理施設での火災急増 リチウムイオン電池含む製品の分別を(2023年6月29日)


4. よくある質問

Q:火事を絶対に起こさないシステムはないのか
A:リチウムイオン電池の火災のリスクを完全に無くすことは難しく、また包括的に火災を起こさせない完全なシステムはまだ市場にありません。
ですので、プラントごとの火災対策としての適切な設計、管理、監視などを検討する必要があります。

Q:導入すれば火災が起きた際の補償を付けたサービスはないのか
A:設備メーカーで火災損の保証を付けたサービスは知る限りありません。
ほとんどのメーカーは、火災が起きないように創意工夫しながら提案しているに留まり、機器の監視下にあったとしても実際に火災が起きた場合の保証はありません。
火災保険の検討をお勧めします。

Q:投資額はいくらくらいか
A:ピンキリで一概にお答えできません
安いものであれば安いセンサーひとつと電磁弁、水配管、電線配線のみで済みますので150万からの投資費用で済みます。
高い物はシステム化され記録を残したり遠隔監視システムなど様々な機能が付いた商品もあり、規模にもよりますが2000万程の投資となったケースもあります。
通常のプラントと違い予防対策の装置ですので、お金を生む類の装置ではないため予算が決めにくく、代表者がどこまで真剣に対策しておくかの感覚によって決められるケースがほとんどです。



5. まとめ

いかがだったでしょうか。2019年以降リチウムイオン電池が急速に普及する中、防火対策への関心も高まってきています。
特にセンサー検知による、火種自動監視の仕組みが注目されお問い合わせが増えてきています。
火災やボヤが起きた際にどの様な損害があるか今一度検討しておき、対策できそうなシステムがあるか探してみるのはいかがでしょうか。
ご使用の機器が使用できなくなった際、復旧の手配にどれほどの期間が掛かるか、被害コストや業務停止のリスクを考慮し、今のうちから対策しておくことをお勧めします。

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